忘れないで 忘れないで

 

キミの目の前を暗くするそいつを壊しにきた 

 

 

色んなことを考えて、どうしたら私は正解で、さっき辛そうにしていた人にどうやって声をかけたら良かったのかなぁ  

飲み会で彼氏に理由を言われずにフラれたと泣いていた先輩に、私は何も言えなかった。  

 

二十九、三十を聴いて帰ってくる夜は、決まってそういう夜だった。

 

 

 

 

 

 

深夜、そう思いながらお風呂上がりに顔に化粧水を塗っていた。何気なくつけたテレビに出てきたのはサンボマスターだった。家族は全員寝ていて、シーンとしたリビング。

 

「新曲 忘れないで 忘れないで」

 

 

サンボマスターをしっかり聴くようになったのは恥ずかしいが近年のことだ。 

私は、サンボマスターを聴くことで何度も泣いて何度も救われて光を見た。そういう歌を歌うのがサンボマスターなのだ。 

 

新曲はちゃんと聞いていなかった。 

 

 

膝に保湿クリームを塗りこむ手が止まる。 

 

 

"キミの目の前を暗くするそいつを壊しにきた"

"底なしの闇を越えてきたんだね 

でももう苦しまなくて良いんだよ" 

 

 

悔しいけど、こういう時に「私のために歌ってくれてる?」そう思えるような曲がロックンロールだろと思うのです。  

深夜のテレビ、私は釘付けになった。ねぇ、サンボマスターは、テレビの向こうから、私の歌を歌っている?

 

 

"どこまでも闇は迫ってきたんだね でももう苦しまなくて良いんだよ"

"しんどくなったならばラブソングを鳴らすのさ優しくて美しいだろ" 

"それでも冷たい雨が君の頬を濡らすなら 僕は勇気を出さなくちゃ"

 

顔が綻ぶ。私のための、私の歌だ。 

久しぶりにそういう曲に出会えた。 

 

サンボマスターは、光の向こうのそのまた向こう。光のロックって、サンボマスターのことだったのか。  

 

曲を聴いていてまた思い浮かぶのはずっとずっと辛かった時の自分と、あの時の私の顔。それから、今の私の好きな人。

誰かにとっての大事な人が、誰かにとっての光のロックンロール。 

 

それは、光のように胸を刺し、 

じんわり、ゆっくりと、冷たくて凝り固まった心を溶かす。 

 

こんな曲と、君と、サンボマスターは 

自分の光のロックだと気づいた、そういう夜だった。