ばらの坂道

  

今が最高だと、つよがれ

 

12月7.8日で下北沢にてという、THE ラブ人間主催のサーキットイベントに行った。私は朝早くから行くと疲れてしまう人なのでどうしても観たいバンドから行くことにした。朝起きると、最初に見に行こうと思っていたバンドが出演キャンセルになっていたので、もう少し眠ろうと思って次に見たかったバンドの時間に合わせて到着するように目覚ましをセットして二度寝をした。起きてから電車に乗り、好きなバンド繋がりの友達に連絡する。「弾き語りなうだよ!」ん??どういうこと??と返した。 

なんと、出演キャンセルになったそのバンドの枠に、私の大好きなTHE BOYS&GIRLSのシンゴさんの弾き語りが入っていたのだ。二度寝なんてしなきゃ良かったチクショウ… 

心の中で悪態を吐くも、案外それを聴かなくても平気な自分がいて変な感じがした。 

 

薄々感じていたけれど、人生どん底だった時に救ってくれたボイガルとメメタァと、他にも沢山の音楽たちは今の私を作っているから今も大切なんだけれど、今は平気になっちゃってるんだろうな、それが例えば一番じゃなくても。    

また必要な時が来たら、それはめちゃくちゃ頼るんだろうと思う。こんな気持ちになっている自分が情けない。と同時に、こんな気持ちになれているのもバンドのおかげだと思うとなんだか不思議な気持ちになった。いつも勇気をくれたのは紛れもなくバンドだったな。シンゴさんの言葉を少し借りるならば、バンドマンと同じくらい自分勝手だ。

 

1日目、最初に観たのはベランパレード。結局間に合わなくてラスト二曲くらいしか見られなかった。だけど寒々とした空気からライブハウスの重たいドアを開けて熱気を浴びたその瞬間、あびくんの声が聴こえて、それは風邪のビリアだった。入った瞬間に、もうキラキラしていたんだ。まるで、小さい頃に見たあのイルミネーションや、クリスマスのオーナメントや、ラメ入りのシールみたいに。聴いていた時の自分を思い出したのと、あびくんとベランパレードがあんまりにもキラキラしていたものだから入って30秒ほどでめちゃくちゃ泣いてしまった。ラストは私の特別、ナイトウォーリーだった。ナイトウォーリーはたしかに暗い曲のはずなのに、いつ聴いてもキラキラしているように思う。 

 

間が空いたので少し空き地に寄ったら、聴き覚えのある大好きな曲を歌っている人がいた。東京少年倶楽部のボーカルの人の弾き語りだった。歌っていた曲はフジファブリックの茜色の夕日。思わず立ち止まって聴き入った。 

 

その後の忘れらんねえよもこれまた本当に素敵だった。3年間好きだった子に彼氏ができたっていうMCが一番盛り上がってたし私もそれが一番気持ちが動いた。ライブであまり聴かないような曲が聞けて嬉しかった。 柴田さんはいつだって等身大で私みたいな人でもどうにかこうにか…って、そういう歌を歌ってくれてるように思う。これを言葉にするのは難しい。 私は村上春樹読んだって、嘘ついたことあるよ。

  

本部に行ったらパレードを行うところだった。 

メメタァのせいごさんや太陽さんに会えて嬉しかった。下北沢の街に響く坂本九の名曲、

上を向いて歩こう」がやけに胸に響いた。やけに狭い東京の空を見たらなんだか泣きそうになった。

 

その後はいつだって私のスーパーヒーロー、 

THE BOYS&GIRLSだった。中間くらいに居たはずが入場規制がかかり、前に流されて観た。途中ダイバーの踵が眉間に直撃して本当に痛かったけど、なんかもうどうでも良かった。良い意味で。24と、階段に座っては、こればっかりは特別で、何度聴いても何度でも救ってくれる曲だ。あなたがやってるロックバンドがいてくれて良かったと、何度思ったんだろう。誰も分かっちゃくれないていうか分かられてたまるかよと、その言葉に何度救われたか分からない。 

ぎゅうぎゅうで聴いたって、ボイガルはやっぱりかっこよかったんだ。あのでかい音が全てを静寂に連れてくと思う。

これはライブとは関係ないかもしれないが、本部や物販のあった下北沢空き地で、BGMが流れていた。そこで、THE BOYS&GIRLSの憧れのあなたが流れていた。この曲を知っている人はボイガルを好きな人の中でも少ないのではと思う。確か、ラブ人間の金田さんが好きな曲だと言っていたので気になっていたけれどもう無い音源のようで、ライブでもやっているのを聴いたことがなかった。どういう曲かと思っていたが、聴いていたらすぐに、これが「憧れのあなた」という曲なのだと分かった。会場のBGMという形で聴けると思って居らず、思わず一曲丸々聴くまで立ち止まって聴いた。嬉しかった。思わぬ形だったとしても、シンゴさんはいつだってその日をドラマチックにする。 

 

その後はメメタァのツアーでハマった、Transit My Youthを観た。最初二曲がぶっちぎって好きな曲で、二曲とも歌われた時にそりゃもう多分、満面の笑みだっただろうな。Daisy Songの「死にたいお前の日々の歌 生きたい君の日々の痣」という詩がとても好きだ。今年出会った詩の中でも衝撃的だったものである。 

 

その後も本当は見たいバンドが幾つかあったが、サーキットイベントならでは、というような企画を観に行った。タイトルに凄く惹かれる企画だった。

「俺たちほんとはバンドマンになりたかった。」

タイトルだけでなく、私にとってはゲストがシンゴさんと金田さんであったことが魅力だった。始まる直前に着いたのだが、パソコンにトラブルが起きたようで一番手の人は焦っていたようだった。 

企画の内容は、ライブの最後の曲前のMC選手権という内容であった。3人がそのMCをしたのだが、ぶっちぎって最初の方が良かった。本当に。多分彼は誰よりもこの企画を考えて大切にしていたんじゃないかと感じた。喋ってることに纏まりなどなかったが、「でもね、でもね、」などという喋り方がまるで銀杏BOYZの峯田さんみたいでかっこよかった。シンゴさんと金田さんが峯田さんと山口さんが混ざってたって言ってたけど本当にそうだった。彼は、かっこ良いロックバンドに何度も救われたんだろうな。彼も、あの瞬間はたしかにロックバンドだったと思う。たくさん笑っている人がいたけれど、私はずっと泣きそうになりながら「頑張れ」と思っていた。こんなところに書いても伝わらないのだろうが伝える手段が分からない。本当に良い企画だったように思った。 

 

ここまでが1日目。 

既に2500字を越えているが、書き続ける。

 

2日目、最初に見たのはThe Whoops 

会場は昨日ボイガルを観た、下北沢ERAだった。ERAにはしょっちゅう来るわけではないのだが、初めてWhoopsを観たのもERAだったので、その時のことを思い出した。ハンブレッダーズを初めて観に行った。1人のライブハウスは、確かあの時が初めてだった。 初めてが詰まったあの2月の夜のことを私はきっと忘れないと思う。私はその日初めてWhoopsを観て、一目惚れというか一聴き惚れをした。その少し前に、ボイガルを初めて観たのだ。ボイガルで行けそうな日程のライブを予約していた。それが下北沢近松だったのだが、対バンで実はそこにWhoopsもいた。彼らがMCで何月何日、下北沢近松でライブをやりますと言った時に行けそうだな〜と思い終演後予定を確認したらなんとそのライブは既にボイガルで予約をしていたという、なんともドラマチックなことが起きて、好きにならずにいられなかった。終演後、物販にいたメンバーたちは皆気さくで優しくて楽しかった。嬉しかった。あの日に名前を宮田さんに聞かれて、答えたら「スピッツだね」と言われて嬉しかった。スピッツの名曲は私の名前だと思えるようになった。あれから会えば「スピッツだ!」って言ってくれるのが実は嬉しい。

あの日のERAよりずっと人がたくさんいた。涙が出そうになった。あの日、私と出会ってくれてありがとうと思った時、最後の曲、「同じバスに乗れたなら」が流れた。それは私がどん底にいた時何度も再生した曲だった。ありがとうって、ありがとうって何度も思った。

 

その後はメメタァの企画のメメフェスの弾き語りを少し観た。時速36kmのボーカルの方の弾き語り。ラブ人間のカバー、おとなになんかならなくてもいいのにがすごく良かった。曲が似合うと思った。 

 

次は下北沢近松でDOUBLE SIZE BEDROOM。 

初めて観た時からあまりの格好良さに思わず泣きながら拳を突き上げていたバンドだ。ロードムービーという曲が大好きで、大切な曲で。ライブで聴く度に脳に歌詞を焼きつけていた。最近MVがYouTubeにアップされてすごく嬉しかった。ボーカルの但野さんは何度もフロアに降りたり飛び込んだり最前の女の子のヘアバンドを取って自分につけたり、もう好き放題していた。なのにどこまでもかっこよかった。メメフェスで初めて観られたバンド、近松という大好きなライブハウスで観られたことが嬉しかった。音楽と2人きりという意味で名付けられたであろうこのバンド名はあまりにも素敵だ。あの日、但野さんが、「自分の歌だと思ったら、それはもう君の為の歌なんだ」と言っていたことを忘れなかった。音楽と2人きりにさせてくれたかっこ良いバンドだ。優しいバンドは冷たくてかっこ良い。

 

空き地に戻ったらちょうどせいごさんが歌っていた。野外で聴いたO.M.Mは冬の空に吸い込まれて透き通っていた。この曲がいつまでも私の特別でいてくれれば良い。

  

次はメメタァだったが、その前にお腹が空いていたので大好きな茄子おやじでカレーを食べた。下北沢で食べるカレーは本当に美味しい。 

 

終わって251に駆け込む。ここのライブハウスは行ったことが無かったけれど、少し痛くて苦しい思い出のある場所だった。だから、251というライブハウスでメメタァがライブをやってくれることが嬉しかった。せいごさんの声はいつだって私の心を優しく包む。ずっと泣きそうだったけど、メメタァのライブがかっこよくて優しかったから泣かなかった。苦しかった思い出を、少し。ここのライブハウスで好きだった人が歌っていたことがある。それをスルーして、あの日の私はBASEMENTBARまで歩いた。苦しかった、あの、たった3分程の道程。下を向いて絶対に泣かないと噛み締めて歩いたあの日。あの王将からBASEMENTBARまでの道は思い出が詰まっていることに気づいた。好きな人と泥酔して歩いたのも、大好きなバンドマンと写真を撮ったのも、友達と泣きながら電話をしたのもあの道だと、メメタァのおかげで気がついた。いつの時も私が聴いていたのはロックンロールだった。

あいつに言えなかったこと、言ってくれたのはメメタァだったし、いつだってロックンロールだった。メメタァを251にブッキングしてくれてありがとうございます。ひょんなことでいきなりフラグは回収されて、私の心から出続けてたいた血は瘡蓋になってロックンロールで優しく塞がれた。 

 

その後はSHELTERでガガガSP。かなり余裕を持って着いたが既にフロアは満員。階段が空いていたのでベストポジションで観る。ガガガSPはずっとなんとなく好きで聴いていたけれど、歌っている人がどんな人だとかそういうのは知らなかった。好きな人のプレイリストにも入っていたので絶対に観ようと決めていた。線香花火という曲が一番好きで、ボーカルが曲名を叫んだ瞬間泣きそうになった。何よりも昔、ライブハウスに良く行っていたであろうおじさんたちがフロアで犇めき合って、モッシュやらダイブが起きていた。皆すごい笑っていたし号泣してる人もいた。こんな風にガガガSPは愛されてきたんだと思って、ロックバンドはそうでないとと思った。 例えばいつか生活や状況が変わってライブハウスに行かなくなっても、またいつか会えると思わせてくれるロックバンドは最高だ。火曜の銀杏BOYZとのツーマンに行ける人が羨ましい。またね、ガガガSP。 

 

入れ違いで始まる近松、ANABANTFULLSに走る。本気でカッコ良いバンドだと思っていて、近松で、下北沢にてでターンブルーを一発目に聴けたのは凄く意味のあることのように感じた。カッコ良すぎるバンドを観るともう笑っちゃうんだと言っていた友達やバンドマンがいたが、その意味を私はこのバンドで知る。重たいサウンド、優しい言葉と歌。ステージの上の安田さんはまるでヒーローだった。このバンドを知ることができて良かったと心から思う。照明に照らされた彼らは紛れもなく光そのものだった。 

 

最後は、GARDENでニューヨークを観た後にTHE ラブ人間。フロアに入ったら既にかなり人が入っていた。一番後ろで見ようと荷物を置きに行く。一番後ろの一番隅っこに位置を取るとラッキーな事にその場所で自分だけ一段上へ登れる事に気づいた。特等席だ。ステージもフロアもめちゃくちゃ見える。程なくして、ニューヨークの漫才が始まった。金田さんのマブダチだという嶋佐さんと、それから屋敷さん。お笑いについてあまり知らない私だが、シンプルに面白いと思えた。何も考えずにシンプルに面白いと思えるものって最高だと思う。さすがM-1のファイナリストだ。人を笑わせることができる人は、優しくて強い人だと思う。

 

遂にラスト、主催のTHE ラブ人間だ。本当にすごく久しぶりに、ここまで心が動いた。ここまでつらつらと観てきたライブについて話したがそれでも足りないくらいラブ人間は美しかった。汚くて泥だらけで優しくて、どこまでも美しかった。美しいという言葉で合っているのか分からない。けれど私にとっては美しいものだったのだ。

  

金田さんのMCが、歌が、どこまでも響いてかっこよくて優しかった。 鍵盤もベースもギターもバイオリンもドラムも、歌っていた。たしかに歌っていたんだ。 

 

「音楽は好きかい?俺も!」という言葉に、涙を零した。ラブ人間のBEST盤のリリースツアー、BASEMENTBARでのことを思い出す。あの日の金田さんは、ライブハウスにいるような物好き達に向かってこう言った。

「これからも、音楽のことよろしくね。」

その金田さんが、フロアにいる全員、バンドマンを含めた全員に聞いた、「音楽は好きかい?」は、これからも、音楽のことよろしくねという言葉と似ているようで似て非なるものだと思う。「音楽が好きだから、音楽が好きならば、音楽のこと、よろしくね。」という言葉が脳内で浮かんだ。よろしくねなんて、こっちのセリフなんだよなって思うと、大好きなバンドが思い浮かんでまた泣いた。音楽が、好きだよ。

 

力一杯胸を叩いて、「輝け!!輝け!!もっと輝け、俺!!!」と言っていた。ばらの坂道だった。

 

ーー今日の残業は、ちょっと辛かったな 

その度引き出しの中に弱音をしまった。 

 

 

その歌詞に助けられた日があった。帰り道の電車で、もう満タンになりそうなところで零しても大丈夫だと歌ってくれていた。

 

ーー輝け 過ぎ去っていった過去よりも今が最高 

今が最高だとつよがれ 

 

今が最高だろ?とかそんな押し付けじゃない。つよがれ、それがどれだけの応援歌なんだろうか。つよがる。どこまでも。 

 

ーーがんばれ がんばれなんて

言われなくても必死こいて頭下げてずっと頑張ってるだろう 

 

そうだ、私はずっと頑張れなんて言われなくたって頑張ってきたんだ。頑張ってるんだ。打っていて泣きそうだ。あの景色を忘れたくない。 

 

ーー見ておけ 自分以外の誰かのため 生きてる姿はみっともないもんだろ 

それでも裸足でばらを踏みしめて行け 

この坂道を越えたら きっと でっかい花が咲く 

 

みっともなくたって、大人になれなくたって生きていくんだ。誰かのために生きるのも良いじゃないか。でっかい花が咲くよな。きっと、絶対だよ。

 

アンコールまで全てが最高にロックバンドだった。砂男もクリームソーダも、何度も再生したんだ。いつだってイヤフォンから聴こえてきた。

 

THE ラブ人間はロックバンドだった。  

 

これからが最高だと、つよがる。 

 

下北沢にて、私なんかが言うなって思われるかも知れないけれど、今まで行ったどのサーキットイベントよりも好きだ。ずっとずっと続いて欲しい。それは例えば私がサーキットイベントに行けなくなったとしても、ツイッターなどで「あ、今年もやるんだな」そう思うだけで力が湧いてくるような、そんなイベント。分からないけれど、きっとそう。 

 

ラブ人間の今が最高だ。ロックバンドの、音楽の、そして私の、今が最高だし、これからが最高だ。つよがっていこう。いつか、でっかい花が咲く。そうやってつよがる。 

 

つよがることは、みっともなくて情けなくて、そしてそんな自分を鼓舞するための、魔法。 

 

つよがる自分を、愛してあげよう。そんな魔法がかかった夜だった。