いちごの唄

 

 

だいじょばないけど、だいじょぶだよ 

 

 

今の恋人と知り合って、2回目のデートは映画だった。なんとなく話していて、映画と銀杏BOYZが好きだという話からいちごの唄を観に行くことに決めた。 

 

私の仕事が終わる時間の方がずっと早くて、適当に時間潰してるから大丈夫って言ったけれど、あの人はわざわざ映画館の目の前のチェーン店のカフェの場所を、URLで送ってきた。 

 

ありがとうと言って、そこで研修報告書を書いていた。来たらすぐ映画館へ行くものだと思っていたので一人で座るカウンターにいた。 

 

しばらくして、あの人はお店に入ってきた。number girlのTシャツを着ていた。黒。 

透明少女…と呟きかけたけど、黙った。 

 

約束していた京都のお土産を渡した。確か、スイカ金平糖をあげた。 

 

 

それから、小さい映画館に行った。渋谷の、奥の方の小さな映画館。座りにくい椅子に座って、私たちは離れた席で見た。映画は一人で観たいと言って。 

 

ライブは一人で観たい私なので、気持ちは少しわかった。離れて映画を観るという選択肢を人生で初めて知った。 

 

映画「いちごの唄」で忘れられないセリフがある。主人公の隣の部屋に住む、パンクロックが好きな女の人が、好きなバンドが解散したことなどをきっかけに言った「もう聴かないから、ロックは。」という台詞が忘れられない。 

 

あの言葉にどれほどの重みがあるかは、きっとロックバンドを好きになった人にしか分からないのだ。今思い出しても苦しくて重たい言葉で、ウォークマンを突きつけるのも、すべてが苦しかった。あのウォークマンは、きっと捨てられなかったんだ。私には分かる。こんな分かったような口ききたくないけど、分かる。 

 

その台詞をきっかけに、私は大泣きした。 

映画が終わって合流したら私の泣き顔を見てからかってきたことを覚えている。 

 

どこで泣けたの?と聞かれたので、正直にあの女の人の台詞を答えた。全然分からないみたいなこと言われた気がする。その後、ボイガルのメンバーが3人脱退した時の話をした。そういうの良いなって聞いてくれてたのを覚えている。 

 

 

 

 

あの時からずっと、そういうところですれ違っていたのかもしれない。だからなんとなく、こういう風になっても合点が行くところがあった。 

 

恋人と大喧嘩して大泣きして、連絡を取りたくない旨を伝えられて、なんだかんだ私の心境は穏やかで自分でもびっくりしている。別れ話と似たようなものなのに、なんでこんなに穏やかなのか自分でも不思議だなと思う。 

 

 

でもきっと、さみしくなるのは、あなたを知ってしまったから。 

 

だいじょばないけど、だいじょぶだよ。 

 

だからきっと、連絡して来ないでね。 

ずっと待っているから。だいじょぶだよ。