Rain

 

ずいぶん君を知りすぎたのに

初めて争った夜のように

行かないで 行かないで そう言うよ

 

 

 

この曲を聴いて、大江千里を思い出す人と、槇原敬之を思い出す人と、それから秦基博を思い出す人がいるだろう。 

 

私が思い浮かんだのは新宿御苑の美しい緑色と、雨の空模様であった。

 

 

 

 

先日、あるニュースで槇原敬之が有名になったので、それきっかけで有名曲しか聴いていなかった槇原敬之を聴き直していたら名曲だらけで近頃はずっと聴いている。 

 

タイトルでなんとなく惹かれたRainという曲を再生したら、この曲私知っているなと思った。でも、たしかに私が聴いたのは槇原敬之の声ではなかった。それが誰の声なのか思い出せない。確かに頭の中で鳴り響く。 

 

曲を調べたら、大江千里の文字。大江千里は夏の決心という曲しか知らない。一応聴いてみる。違う。 

 

何故か焦っている心がぎゅっとなる。まるで一目見た人を好きになってしまって、また会いたいと思う時のような。 

 

サブスクを使っているので便利な検索欄を使う。違う、ちがう………と思ったところで秦基博の文字が目に入る。ジャケットには見覚えのある映画のタイトルと似た言葉が書いてある。あの緑色は、と、そこでやっと気がつく。 

 

再生ボタンを押した瞬間、私はあの美しい映画の世界を見た気がした。 

 

 私が聴いたのは、言の葉の庭という映画の曲だったのだ。あの、何度も何度も繰り返し観た映画。大好きな映画なのに、どうして今の今まで忘れられたんだろう。  

 

どのシーンのどの瞬間にあのイントロが流れて、誰が何を言ったかまで鮮烈な記憶があった。

 

音楽と映画と、私。なんとなく繋がって、なんとなく嬉しくなった瞬間が確かにあった。  

 

 

特別に新海誠監督が好きなわけではない。でも秒速五センチメートルも君の名はも、天気の子も観た。 

どんなヒット作より、どんな話題作より、私の神様が歌っている劇中歌が使われた映画より、 

私の心に残ったのは言の葉の庭だったのだ。 

 

その事実がなんだか嬉しかった。 

 

こういう瞬間が確かにあるということが、また私を嬉しくさせると、仕事へ向かう朝に思うのだ。