漂流劇団
今からこの世界がひっくり返らないかな。
この曲を初めて聴いたのはTHE BOYS&GIRLSがやっていたボロドンバーンというラジオ番組でだった。
真っ暗な部屋。布団の中で聞いたその曲は、私の心に突き刺さって、良いなという気持ちを超えた曲だった。
こんなに明るい曲なのに、どうしてこんなに悲しい私の気持ちを分かってくれるんだろうと思った。
惰性と吐息でお茶を濁してる
私は多分、場の空気を読むのが人よりもずっと得意な方だと思う。でも、だから、人の気持ちを考えてはしんどくなるし、下手な冗談を言う自分が嫌いにもなる。
人がどう考えているか、思っているか、深読みしては上手くやりくりできず、声もかけられない。最低すぎる。
仕事で落ち込む度、どうしたら良いのか分からなくなる。
人間関係で悩む度、悲しくて虚しい気持ちになる。
勝手に落ち込む度に、私はどうしてこうなんだ
嫌いなあいつは今だって笑ってる
そう思う度に真っ黒な心の奥底が見え隠れしてしまう。
こんな世界にずっと前から、ずっとずっと、疲れている。
今から、この世界がひっくり返らないかな
客席はガラガラのまま また次の幕が上がる
全てがなかったことになって、全部がひっくり返らないかなぁ。
バケツの水をひっくり返したように、何も無かったことに。
ある日友達に、
「いつが一番楽しくて幸せだったの?」と聞かれたことがあった。
友達は簡単な気持ちで聞いたんだろうけど、全然答えられなくて考えていたらもう3日以上経っていた。
いつに戻りたいと思える時が、なかったし、ない。
幸せだなと思える時も、なかった。
その友達に正直にそう思える時がないと伝えたら、「私は常に今が一番だからなぁ」と返ってきた。
心底羨ましかった。
私は、今は多分、こう、幸せだという気持ちや好きな人を思う気持ちを怖いと思っているから
今は本当に幸せなんだなと思う。
仕事面でも良くしてもらっている。
この世界は、今は幻なんじゃないかとさえ思う。
でも、
今日、久しぶりに仕事で怒られた。
全然納得のいく理由じゃなくてモヤモヤしたけど、すみませんでしたと謝るしかなかった。帰り道、一緒に怒られた先輩と愚痴大会しながら駅まで帰った。
皆自己中で嫌になるけど、その人にも思うことがあるから怒るんだろう。
私はどうするのが正解だったのか未だに分からずにいる。
もちろんすみませんとは言うけど、
心の奥底では悶々と黒くて禍々しいもんが渦巻いていて、先輩に愚痴ったことも少し後悔した。
あと少しだから頑張ろうねって、その言葉を帰り道に思い出した時、イヤフォンから、シャッフルで漂流劇団が流れた。
今からこの世界が 優しく変わらないかな
嫌いなあんたがいつか 幸せになれますように
私を理不尽に怒った上司も、思うことがあったんだろう。大嫌いだけど、いつか幸せになれますように。過去に好きだった、大嫌いなあいつも、私を見下してきたやつも、みんなみんな、幸せになれば良いよ。
あなたを笑わせたいのだ
歯の浮くようなセリフを並べて
幻みたいな世界を彷徨って
疲れたあんたと話がしたい。
嫌なことがあった時や悲しい時、辛い時に
すぐに大事な人に頼ってしまうのは、昔から私の悪い癖だ。それで私の周りから何人離れていったんだろうか。
なのに、あなたは私を笑わせてくれる。
歌詞をそのまま、歯の浮くようなセリフを並べてね。
疲れた私といつまでも話をしていてよ。
こうやって嫌なことがあって、イヤフォンから流れてくる漂流劇団に泣きそうになって。
帰り道トボトボ帰っても、好きな人のことを考えていたら、君に話したことや話せたことを思い出したらなんでも良くなった。
幻みたいな世界を彷徨っていた私を
見つけてくれてありがとう
こんな世界に疲れた私と 話がしたいと思ってくれてありがとう
この世界を、彷徨っている私と、君と、
ただ抱き合って喜びたいのだ
彷徨う僕らの、日々の、向こう。