東京メトロ

 

 

すれ違う手を取って。 

 

好きになった人には、彼女がいた。 

 

知らずに好きになったんだよね 

今ではわからないけど、その時は本気で彼のことが好きだった。 

  

私は彼の一番にはなれなかったけど、 

一番じゃなかったから、彼の心の奥深くを知った気がする。 

絞り出すように話す彼の言葉は悲しいのに 

嬉しく思う自分が馬鹿らしかった。 

 

きっと、出会いは偶然で、 

きっと、別れは必然です。 

 

 

彼女に関係が知れてしまったのは 

クリスマスイブだった。 

イルミネーションが大嫌いになった。

 

連絡を取らなくなったし、会わなくなった。

当たり前だ。

 

 

数日後、彼から連絡がきた。 

「彼女、お腹に刃物刺してたんだ 」

 

私に言うことなのかと思った。 

罪悪感を植え付けたかったのか。 

私は殺人犯になるところだったんだな、そう思うと色んな気持ちがこみ上げてきて 

ボロボロ泣いた。  

 

好きって感情だけで生きられるほど、 

私は綺麗じゃないと知った。 

 

最後に会ったのは、浅草だった。 

電車のホームのぬるい風が 

彼を攫っていったのかもしれない。 

 

写真はまだ見れないのに消せない。 

 

快速は私を追い越して 

君の街まで走って行くんだね。 

 

声は君を追いかけた。 

寝ても覚めても、君を思っていて、 

 

正しいことや難しいこと 

きっと僕の言葉で伝えたいだけ。 

 

きっと、それだけだったな。 

 

すれ違う手を取って。