間違い探シンドローム

 

負けたくないから、間違い探しをしていた。 

 

多分、私は昔からちょっとプライドが高くて、 

変なところで負けず嫌いだった。  

それに気づいたのも最近の話だ。 

(正しくは認めるのに時間がかかった。)

 

部活ではレギュラーを全然取れないくせに、 

あいつらとは違うんだと 

毎朝走ったり、朝練には誰より早く行き、 

片付けや掃除は自分が一番ちゃんとして、 

誰より大きな声でプレーすると決めていた。 

 

顧問の先生は、そんな私のことを買ってくれてはいたが、それはそれ。

それでレギュラーが取れたかというと、

結果としてダメだった。ずっと下手くそなままだった。  

 

でもその時の自分は、今もそうだけど 

頑張らないことは何よりかっこ悪いと思ってた。 報われる報われないの話ではないと 

思っていた。  

 

ちっちゃなちっちゃなプライドだ。 

 

部活を引退した後も、私がバイトを始めた時 

同じタイミングで始めた1つ上の先輩がいた。 

私は高校生だったので深夜帯には入れなかったのだが、その先輩は入っていた。 

 

深夜帯に入っているというだけでお店からは重宝されるものだ。 

 

私はたったそれだけで負けたくないと思っていた。たかが数時間の差で負けるかと思っていた。仕事を早く覚えようとメモを家で見返したり、よく動ける人のことをよく見たりしていた。 

 

でも、どう考えてもその先輩の方が仕事ができるのである。

(これは後々分かったことだが、 

その先輩は自他共に認める器用で効率の良い人だったのだ。 )  

 

負けたくない、負けたくない。毎日思っていた。でも、それを態度や顔に出すことは 

最もかっこ悪いと思っていた。

 

時は経ち、私は短大生になった。 

深夜帯にも入れるようになり、仕事もかなり慣れ、怒られることもあるが出来るようにはなってきた。 

その先輩とも少しずつ仲良くなった。 

 

その先輩は大学生だったので、私の方が先に 

バイト先を卒業することになった。 

何日に卒業するということを告げた時、先輩に言われた。

 

「いつも負けたくない〜!!って顔に出てて、超頑張ってたよね。私全然張り合ってなかったのにさ。笑 なんかごめんねって思ってた。笑」

 

すごくすごくすごく恥ずかしかった。  

雪の日に駅の近くで滑って尻餅をついた時よりも恥ずかしかった。  

と、同時にめちゃくちゃ悔しかった。 

 

私、今バカにされてるなって思った。 

 

何も言えなかった。

  

その時に思い出したのは、  

小さい頃の記憶だった。 

 

幼稚園の頃、私は縄跳びが苦手だった。 

同級生が簡単にクリア出来ることが私には出来なかった。 

幼稚園から帰って、そのまま家の駐車場で 

真っ暗になるまで縄跳びの練習をした。 

手には豆ができて潰れて、血豆もできてた。 

 

私はお母さんやおばあちゃん、おじいちゃんに「努力家だね」と言われた。 

「あなたの良いところは努力家なところよ」 

そう言われた。 

 

頑張ってるという意識がなかったその時の私は心底驚いた。「あっ、これ、頑張ってるって言うんだ」って。 

 

その頃から、「努力家じゃない自分は自分じゃない」

 

そう思うようになった。呪いだった。

 

だから、部活もバイトも仕事も自分に負けたくなかった。頑張りたかった。 

 

いつの日か気づいた。 

私は頑張ってる自分が好きなんだなって。 

 

他の人が頑張らないところで頑張りたかった。 

だから少し時間がかかっても、バイト先では皆が適当にやるしやりたくない汚いところの掃除をめちゃくちゃ丁寧にやったし、 皆が持ちたくない重たい生ゴミを持ってゴミ捨てに行った。

部活は他のメンバーが嫌いなモップがけをしたし、文化祭とか体育祭も、皆がやりたくない仕込みの仕事だの経費の計算だのをした。  

今だって、皆がやりたくない仕事や細かいところの掃除とかをしているものだ。気づいている人などいるのだろうか。

 

それを知っているのは自分だけで良いと思っていた。誰にも「偉いでしょ」なんて言わなかったし、自分のプライドの為にやっていたので 

思ってもいなかった。  

  

だから、それをバカにされた時、 

「お前みたいな器用な人間に何がわかるんだ」 

と、沸々と思った。 

 

先輩だってそれなりに傷ついて生きてきているはずなのに、私はそう思った。 

 

まるで間違い探しだった。 

 

先輩に、会社の同期に、友達に、 

お前とは違うと何度も思った。 

 

違うところを探しては安心してた。  

周りの人が心底羨ましかった。強く、器用に生きられて、愛されて、羨ましかった。

でも、負けたくなかった。 

 

君にあって、僕にないもの見つけたくなったんだ。 

 

頑張るのは辛いのに、中々報われないのはきっと僕だけじゃないだろう、大体皆んなそうだろう。 

でも君ばっかずるいと思ってしまうのは、一体どうしてなんだろうな。

 

羨ましかった。だから間違い探しをした。 

 

私はここにいた。 

 

間違い探シンドロームを始めて聞いた時

「見つからなくても、負けるわけないから」

そのフレーズにどれだけ救われただろうか。

 

負けるわけない。 

 

そうだよ、私はここにいる。 

負けるわけない。 

 

変わるきっかけをくれたのは、 

強くて優しいロックバンドだった。