ナイトウォーリー

 

 

お願い、今は笑って受け取って。

 

ベランパレードとの出会いは、福岡のライブハウスだった。この時はボイガルのツアーだった。 

 

私は横浜に住んでいるのだが、 

この日は遠征で訪れていた。ベランパレードを観るのは初めてだったが、シンゴさんのコメントを読んでいたので本当に楽しみにしていた。 

 

終盤まで、

うんうん、良いなって思って聴いていた。 

歌っているあびくんは、冗談じゃなく、 

歌王子という名前が似合っていたように思う。

 

あびくんは歌っている時が一番カッコ良くて、

一番優しい。 

  

最後のMCで、あびくんは色んなことを言っていた。ふざけたことも喋ってた。 

最後の一言で、私は、嬉しくて泣きたい気持ちになった。 

 

「ねぇ、ロックバンドを好きになって良かったね。」 

 

シンゴさんの、スーパーヒーローの顔が浮かんだ 

 

すぐに、ナイトウォーリーが始まった。 

 

 

お願い今は笑って受け取って 

もしもいらないなら明日の朝 

僕のベッドの上に置いてって。 

 

なんでかわからないけどポロポロと涙が出てきて止まらなくなった。  

 

 

私の心は、ズダボロだった。 

好きな人とは結ばれず 

職場では毎日怒られ無視され圧力をかけられて 

友達にはわかってたまるかと思って  

 

上手く、心がコントロールできなかった。 

泣きながら眠る夜が続いていた。 

 

心巻き上げて声まで枯らして言葉は 

いつものように期待はずれ 的外れ 

それでも声は止まないから 

 

言葉は、的外れなことばかりで 

悲しくなった。 

今までずっとずっと言葉の力を信じていたから。 友達の言うことも一部以外は 

信じられなくなった。高校の同窓会も、短大の集まりにも行きたくなくなった。 

それでも音楽を聴くことは辞められなかった。

イヤフォンから、ライブハウスで、あの声は止まなかった。

 

 

降り続く雨、立ち尽くす日々

このまま何処にも行けなくても。

 

ボイガル以外で、止まることを肯定されたのは

初めてだった。

 

ずっとずっと、私の心には暗雲が立ち込めて

毎日職場へ行く脚は重く、吐き気を堪えて向かっていた。 

このまま、私は死ぬのかと本気で思っていた。心は立ち止まったまま、どこにも行けなかった。

 

 

でも、優しいロックバンドを知った。 

ロックバンドは、歌は、音楽だけはずっとずっとずっと、閉ざした私の心の側にいたように思う。 

たった1つの、私の光だった。

 

失恋した時も、学校でいじめにあった時も、

友達だと思っていた人から裏切られた時にも、 

職場で散々罵倒されて、悲しい思いをしても、 

いつだって、 

その光は消えなかった。

 

優しくて、あったかい光だった。  

 

翌日の広島のボイガルのツアー、 

あびくんは、ナイトウォーリーの前のMCでこう言った。 

「ねぇ、ボイガルを好きになって良かったね。」 

 

 私、ボイガルを好きなって、ベランパレードと出会えて、本当に良かったと、心底思った。

 

大好きな音楽を聴いたならば、 

 

そしたら夜はまた優しく 

僕たちの心に光を集める。

 

ナイトウォーリーは、光を集めて 

きらきら輝いていた。